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かがくのじょうしきのため
科学の常識のため
宮本 百合子
「新女苑」1940(昭和15)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,479 字 · 19 页
の面白さを懐しく想起させずにはおかない。シートンの熊の生活の報告、狐の話その他何と鮮明に語られていることだろう。ところが、シートンの相当な読者であった私は、大きい疑問をこの著者の報告の科学的な良心に対して抱く一つの物語をよまされた。それは、バルザックが「砂漠の情熱」という題で書いた牝豹とアフリカ守備兵のロマンティックな短篇を、シートンがその筋のまま物語っていることである。コフマンのこの本も猿が人間生活の感情にある理解をもつことは語っているが、アフリカの牝豹が守備兵を恋するというようなことは、科学の見解に立つ動物学者に肯定さるべき現実だろうか。シートンの生涯の努力がこの一つのために決して少くない信用を喪わせられていることを遺憾に思った。改造文庫で出ているジャック・ロンドンの「野生の呼声」や「ホワイト・ファング」は犬や狼を描いた文学作品の出色のものであるし、キプリングの「ジャングル・ブック」(岩波文庫)もなかなか豊かな動物と人間の絵巻をひろげている。ハドソンの「ラプラタの博物学者」(同上)は、野生鳥類の生彩に溢れた観察、記述で感銘ふかいものである。「日本の鳥」