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かがくのげんかい

科学の限界

中谷 宇吉郎

「心」平凡社、1958(昭和33)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,657 字 · 18 页

青空文庫

それでこういう一番簡単なことでも、同じことを二度くり返すことは、出来ないのである。

しかしそれでは学問のつくりようがないので、自然界の中から、なるべく再現可能に近い現象がないかと探してみる。幸いなことには、いわゆる自然現象は、大部分が再現可能に近いのである。別の言葉でいえば、再現可能という原則の上に立って、学問を組み立てて見ると、かなり良い精度の範囲内で、うまく現象の説明が出来るのである。それを「現象がわかった」という。現象の内容がわかれば、こういうことがあれば、次ぎにはどうなるかという予想が立ち、その範囲内での予言が出来る。また湯気が鉄瓶の蓋をもち上げる力の内容がわかれば、それをどう使えば、機関車を動かすことが出来るかという工夫が立つ。そういう予言や工夫を、人間生活に役立つようにもって来ることが、即ち科学が役に立つこととなるのである。

以上の話で大切なことは、再現可能という原則の上に立って、学問を組み立ててみると、かなり良い精度の範囲内で、うまく説明出来る現象が自然界に多いという点である。しかしこれは全部の自然現象がそうだというのではない。此処で自然現象というのは、前にもいったように、人間なども一つの自然物と見て、その中に含めた広い意味である。