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かがくひはんのかだい
科学批判の課題
三木 清
「新興科学の旗のもとに」新興科学社、1928(昭和3)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,229 字 · 40 页
そして批判ということは、『純粋理性批判』の著者たるカントにおいてのごとく、単に善悪を判決するという以上の深い意味をもたねばならない。カントの仕事は、当時の自然科学、殊にニュートンの物理学の個々の命題の善悪、正否を批評することにあったのでなく、誰でも知るように、数学的自然科学の基礎づけ、その論理的前提ないしは条件の闡明であったのである。今日もし哲学者にして、いやしくも彼が真の哲学者として、社会科学を批判しようと欲するならば、彼はあたかもカントの先蹤に倣って、社会科学の基礎づけの仕事に従事すべきであろう。否、かくのごときカント的なる課題、すなわち社会科学批判の課題はまさに現実に課せられているのである。それは先きに掲げたベーコン的なる課題とともにそれと手を携えて、むしろそれの根柢として、極めて重要である。しかるに人々はかくのごとき批判の意味を、何故か特に社会科学としてのマルクス主義に対してのみは、否認しようとするのである。彼らは、ディルタイが精神科学に対するカント的なる課題をみずから引受けて、自己の任務を「歴史的理性の批判」と呼んだところのその批判の意味をさえ理解しようとはしないのである。