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かがくしゃとよみせしょうにん

科学者と夜店商人

海野 十三

「科学画報」1929(昭和4)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,858 字 · 8 页

青空文庫

而も液体の容器は錫鍍鉄板で出来ているバケツではないか。おお、この液面は大地電位に在る。この液面は接地されていたではないか、と科学者は意外な発見に興奮して来るのをヤッと冷静に抑えつけることが出来た。

鵜烏は不電導体である。これを載せたる液面は良電導体である。若しこれがアベコベだったら鵜烏に小さい鉄片をつけて置いて、液中に電磁石をしのばせれば、電磁石の吸引力で鵜烏を水中に引っ張り込むことが出来るのだが、如何にせんそれとは全く逆であるのだから駄目だ。

だが全く逆であること、つまりある条件がネガティヴ的に満足されているということは、一寸面白い問題ではあるまいか。若し液が帯電状態にあるものとし、これが普通の状態として非帯電状態に在る鵜烏を見れば、これは明かにネガティヴの電気的歪力がかかっているとも考えられるわけである。所謂、相対性理論をつかえば立派に証明のできることではあるまいか。すると、この薄汚い男は、早くも其の結論をつかむことが出来て、今や夜店に出でて商品を売り研究費の回収と、製品の寿命試験をやっているのではあるまいか。科学者は、正しく素晴らしい研究問題にぶつかったのを感じた。