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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

が夫が一つ一つ異った性質を有てばこそ、個々の事象なのだ。仮に法則がこうした諸々個々の事象からの共通な一般的な関係を抽出して出来上ったものだとしても、逆にこの法則をこの諸々個々の事象に当て嵌める時には、もはや単なる反覆などではあるまい。そこでE・カッシーラーは、法則とこの個々の事象との関係を、関数とその変数がとる個々の数値との関係として理解しようとする。一定の曲線を表わす関数はこの曲線の個々の点に就いて、単に自らを反覆するのではない。この曲線のカーヴ・トレーシングから考えて見れば判るように、法則たる関数は、個々の事象に相当する曲線上の(恐らく連続した)諸点を、次々に描き出し、生産して行くのである。自然科学に於ける法則をば反覆する共通者であるかのように考えて片づけて了ったリッケルトは、発達した現代自然科学のこの法則の観念(関数概念)を知らないのだ、とそう批難するのである*。

* E. Cassirer, Substanzbegriff und Funktionsbegriff. ――従来の自然科学は何等かの実体を中心として方法が成り立っていた。現代はその代りに関数関係が用いられる。