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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

之を促進する最も有力な要因の一つになっている。このことは、注目されねばならぬ。戦争準備は自然科学に技術学上の膨大な切迫した要求を課し、戦争の実行は自然科学の一種の実験としてさえ、稀に見る大規模な又特有な性質を有っている。無論こうした要求と与件とによる自然科学の発達は、科学の健全な一般的発達を根本的に犠牲にして初めて得られる「発達」なのだから、つまりはそれだけ自然科学の不具的発達(?)であり、現に之によって、社会の大衆の日常生活にとって切実な技術学上の要求は、殆んど完全に蹂躙されて了う。にも拘らず之によって、自然科学が局部的にヒステリカルにでも「発達」するという事実は認めなくてはならぬ*。

* こう云う点を考慮に入れて云うならば、フランスの技術学的基礎を置いたものは軍需技術学を獲得すべくイギリスの技術を移植した砲兵将校ナポレオンだと云うことが出来る。ここからフランスに於ける(否世界に於ける)数学・力学・物理学の目ざましい発達が起こった。――明治初年の日本に於ける西洋式数学者や物理学者の多くは、海軍軍人だったと云われている。

だが今日社会の生産関係は、世界の六分の五の面積に於ては、云うまでもなく資本制組織であり、或いは之に集約された限りの前資本主義的諸生産様式のものである。