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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

* W. Dilthey, Gesammelte Werke, Bde. 5. 7. 8 参照。なお『哲学とは何か』(鉄塔書院)中のディルタイからの訳の部分を見よ。

この距離を更に徹底的に又妄想的に拡大したものは、知識と教え又は道とを対立させる立場である。東洋的倫理や宗教的真理は、自然科学的乃至科学的な「知識」でないばかりでなく、之を絶対的に超越した成層圏的な世界だというのである*。尤もこの種類の哲理観は夫が多少とも文化的な外形を具える必要がある場合には、元来は科学的知識と決して矛盾しないということを強調するのを忘れないが、併しそういう譲歩は、単なるうわの空の儀礼にしか過ぎない。教えや道のためには、場合によっては科学的真理や思考の科学性などは、いつでも犠牲にされて構わないのである。この高遠な哲理は処が、不思議なことには、現代の腐敗しつつある市民社会の最も卑俗な「常識」や、「専門的」哲学者の思想に、甚だよく適合するのである。――こうした深遠にして同時に浅薄な哲理の内に、前に云った科学性=実証性を認めることは無論全く不可能なことで、之が吾々の今の問題の外に逸脱するのは遺憾である。