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かがくろん
科学論
戸坂 潤
「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页
というのは物質は運動することをその根本特色としている。運動しない物質は、物質ではあり得ないからである。――処で一体、運動なるものが弁証法の代表的な場合であることは、ゼノン以来人の知る処だ。運動とは一定の場所に於ける、物質の存在と非存在、その有と無の絶対的矛盾を現実的に統一し止揚したものだからである。物質が有と無との弁証法的統一であったが、その際場所だとも考えられた物質が、それ自身場所に於ける有と無との統一としての運動となる。だが之は強いて、或る物体の機械的・空間的・運動に限って物を云ったわけで、運動はもっと広範な含蓄を有っている。と云うのは物質そのものが変化・発展・転化することが、物質に固有な運動の意味だからである。之は一定状態の有と無との弁証法として、ヘーゲルが「成」の範疇によって云い表わそうとしたものに相当する*。
* 但し吾々はここにヘーゲルの弁証法を援用してはいない。ヘーゲルの有→無→成の弁証法にはヘーゲル弁証法に固有な困難がひそんでいることを考えるからである。
今物体の空間的運動については後にしよう。それより先に片づけなければならぬのは、この運動(変化・発展・転化)する物質の一層の規定である。