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ほどよいひと
程よい人
豊島 与志雄
「女性線」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,328 字 · 21 页
そういう風に、あとは世間話みたいに流してしまうのである。だが、嘘はあまりない。母の病気というのも本当だ。母は右肺に結核の病竈がある。もう可なりの年配だし、患部は固まっているので、さし当って心配なことはないが、ふだんに警戒を要する。過労や栄養不足は殊に避けなければならない。この母を大切にしたいというのが、私の真意なのである。
斯くて、話の全般に気を配り、多少のゆとりを示し、決して押しつけがましくならないように話をした。
それになお、私は自分の人相についても自信があった。色は白い方だし、眉根は開き、額は広く、殊に鼻がすっきりと高く、自惚れではないが、ノーブルな顔立ちと言って差支えない。私自身の経験から考えても、容貌に卑賤さや卑屈さや凶悪さなどが感ぜられる者には、金を貸す気にはなれないが、そうでない者には、うっかり金を出してやりがちだ。つまり私は、借金をし易い人相に生れついてるのである。
然し、こちらはいくら条件が揃っていても、全然余裕のない相手では仕方がない。これは絶対的なことで、前以て私はひそかに物色しておいた。同じ会社に勤務していれば、多少の余裕があるかどうかの見当ぐらいはつく。