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いねのいちにち
稲の一日
中谷 宇吉郎
「世界」1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,013 字 · 20 页
それでは一日を十二時間にせず、八時間くらいにしたら、収穫までの期間を三分の一に縮めることが出来るかもしれない。さらに六時間にしたら四分の一、その流儀で行けば、見る見るうちに米が出来ることになる。そんな馬鹿なことが出来るはずはない。こういう生物の生長を支配する時間の中にも、物理的な時の要素も、もちろんはいって来る。例えば根の細胞膜を透して、肥料成分が瀰散に類似の経過で吸収される速度などの中には、物理的な意味での時がはいっている。肥料の吸収と限らず、植物体内の成分の移動などには、この瀰散的な経過が到るところで生じているはずである。それで稲の一日を縮めるのに、或る限度があることはもちろんである。そういう点も大切な研究題目になることであろう。
夢のついでに、この実験が成功裡に完遂されたとする。そうすると、話が面白くなって来る。この作米装置の中で六毛作が出来るとなると、どれくらいの面積があれば、人間が一人生きて行けるかという問題を計算してみたくなる。
それには現在の水田を使って、天然の風雨にさらさせながら、最も沢山の収穫をあげた例をみる必要がある。専門外のこととて、充分な資料は調べられないが、反当り二十俵を一寸越した例があるそうである。