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くうちゅうふんぼ

空中墳墓

海野 十三

「新青年」博文館、1928(昭和3)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,986 字 · 28 页

青空文庫

昨夜相良氏はどうした?」

「あの男は、今朝も例のとおり、会社へ出かけてゆきましたよ。青い顔はしていましたが不思議に元気でしたよ。昨夜の容子じゃ、自殺するかナ、と思いましたが、今朝の塩梅じゃ、相良十吉少々気が変なようですね」

「なにか手に持っていたか」

「近頃になく持ちものが多いようでしたよ。手さげ鞄に小さい包が二つ」

ここで私は黙り込んだ。不図眼をあげると根賀地が常になく難しい面持をしていた。そして急に私を呼びかけたのである。

「先生。今度の事件ばかりは、僕にちっとも内容がつかめないのですがな。先生は僕を半年前から中央天文台に祭り上げてしまいました。先生の教えて下すった天文機械学の要点は割合にうまくのみこめて、台長や主任からも別に怪まれずに居ます。相良氏が舞台へ現われて来て、いよいよ事件は白熱化したと思いました。私は一生懸命で天文台の職分を守り、又先生の御命令に弁じています。随分妙なくどき方ですが、これも今度の事件が私にちっとも呑み込めないことなんです。先生、一体相良氏は悪人ですか、それとも同情すべき善人なのでしょうか。それから、私はまだ松井田に出会わないのです。