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あきや
空家
宮崎 湖処子
「国民之友」1889(明治24)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,554 字 · 30 页
ものは月日、三年立ち五年過ぎ、村人の代も変りて去年新たに隠居して本願寺に詣でし父老の一人、帰村の初め、歓迎の宴席において語れるその紀行のうちに左の一節ありしなり、
「われらが西京より近江に出でて有名なる三井寺に詣ずる途中、今しも琵琶湖を漕ぎ出る舟に一個の気高き行脚僧を見き、われらが彼を認めし時は、舟すでに岸を離れてありき、われらが彼を熟視するごとく彼もしきりにわが一行を打ち守りき、ついに彼は舟子に舟を返さしめんとするさまなりしが、その語は櫓の声波の音に紛らされ舟は返らずしてますます遠ざかり、互みの顔ようように隔たりつつ、ついに全く見えなくなりぬ、さてその法師の容貌と風采とは、さながら年とりし佐太郎そのままにて、不思議の再会最も懐かしく思いたるに、他に佐太郎にあらずと言うものもあり、さらばとて、帰り路に再びそこを過ぎたれど人にも舟にも遇わざりし」と、