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くうそうにちろく

空想日録

寺田 寅彦

「改造」1933(昭和8)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,488 字 · 21 页

青空文庫

をしたことである。人間の人間的活動をそれだけ多くしたという事である。換言するとそれだけ多く「生きた」ということである。

こう考えて来るとわれわれの「寿命」すなわち「生きる期間」の長短を測る単位はわれわれの身体の固有振動週期だということになる。

そこで、今かりにここに侏儒の国があって、その国の人間の身体の週期がわれわれの週期の十分の一であったとする。するとこれらの侏儒のダンスはわれわれの目には実に目まぐるしいほどテンポが早くて、どんなステップを踏んでいるか判断ができないくらいであろう。しかしそれだけの速い運動を支配し調節するためにはそれ相当に速く働く神経をもっていなければならない。その速い神経で感ずる時間感はわれわれの感じるとはかなりちがったものであろう。それで、事によるとこれらの一寸法師はわれわれの一秒をあたかもわれらの十秒ほどに感ずるかもしれず、そうだとすれば彼らはわれわれのいわゆる十年生きても実際百年生きたと同じように感じるかもしれない。

朝生まれて晩に死ぬる小さな羽虫があって、それの最も自然な羽ばたきが一秒に千回であるとする。するとこの虫にとってはわれわれの一日は彼らの千日に当たるのかもしれない。