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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
しかし事実は、病院だけでなく、学校と研究所も少くないところであった。それ等の建物は、多くは三層又は四層の建築となっていて、病室の多い病院と間違えられるような恰好をして並んでいた。しかし数の方からは何と云っても病院の方が多く、そこから白いシーツなどがヒラヒラと乾されているのが、兎角通行人の目につきやすく、病院街と呼ばれることになったらしい。
その駿河台の、ややお茶の水寄りの一角に、「戸波研究所」と青銅製の門標のかかった大きな建物があった。今しも、そこの扉が、外に開いて、背の高い若い男が姿を現わした。
「此の辺一帯は、うまく助かって、実に幸運でしたね」そう云って、後を振りかえった。
「そうですかねえ」
とんちんかんの答をしたのは、若い男を送って来た中年の、もしゃもしゃした頤髯を蓄えている男であった。それは、どこかで、見覚えのある顔、見覚えのある声音だった。
「では先生、お大事に」青年は云った。
「いや、有難とう」
と頤髯先生が、頭を下げた途端に、いきなり、先生の身体は内部へ引擦りこまれてしまって、代りに、がっしりした大きな面が、ニュッと出た。
「あんた、先生様を、連れだしたりして、困るじゃねえか。