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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「赤外線写真は、どうでした?」彼は、司令官達に、敬礼を済ませるが早いか、気になることを尋ねた。

「うまく出たようだ。ここにある」湯河原中佐が、クルクルと捲いてある細長い印画紙を机の上に、展げて見せた。

「ははァ、よく判りますね」と、帆村探偵はお茶の水に近い濠端の、ある地点を指して、云った。「肉眼で見たのでは、なんの変りもない草叢つづきですが、斯うして、赤外線写真にとって見ると、どこに、坑道の入口があるか、直ぐ判りますね」

「だが、よくまア、坑道のあることが、判ったものだね」司令官が、感心をした。

「それは、帆村君の手腕ですよ」中佐が、代りに説明した。「空襲の夜、放送局を占領した不逞団の頭目に鬼川という男が居りました。これを捕縛して、帆村君に預けたのです。すると帆村君は、紅子という少女を使って、鬼川が知っている団の秘密をすっかり聞いてしまったのです」

「少女紅子を使ったというのは?」

「それは、帆村君が研究している読心術ですな。丁度、塩原参謀が、その少女と、瀕死の重傷を負っていた弟の素六というのを、放送局舎の中から助け出したんです。帆村君は、その少女を見て、駭いたそうです。