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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

弦三は恨めしそうに兄を見上げた。「いまに東京が空襲されたら大騒ぎになるから、市民いや日本国民のために、瓦斯マスクの研究が大事なんです」

「瓦斯マスクのことなんか、軍部に委しといたら、いいじゃないか。それに此後は戦争なんて無くなってゆくのが、人間の考えとしたら自然だと思うよ。聯盟だって、もう大丈夫しっかりしているよ。聯盟直属の制裁軍隊さえあるんだからね」

「戦争なんて、野蛮だわ」紅子が叫んだ。

「でも万一、外国の爆撃機がとんできたら、恐ろしいわねエ」

と云ったのは姉娘のみどりだった。

「もう五年ほど前になりますけれど、上海事変の活動で、爆弾の跡を見ましたけれど、随分おそろしいものですねエ。あんなのが此辺に落ちたら、どうでしょう」嫂の喜代子が、恐怖派に入った。

「きっと、爆弾の音を聞いただけで、気が遠くなっちまうでしょうよ。おお、そんなことのないように」みどりが、身体を震わせて叫んだ。

「大丈夫、戦争なんて起こりゃせん」黄一郎が断乎として言い放った。

「ほんとかい」今まで黙っていた母親が口を出した。「あたしゃ清二の様子が、気になってしようがないのだよ」

「清兄さんはネ、お母さん」