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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

メーコンとラオコンとの艦腹に開く強力なる機関砲は、鼻を並べて、殷々たる砲撃を開始した。

日米両艦隊の戦闘は、いまや順序を捨て、予測を裏切り、いずれが進むか退くか、俄かに計り知ることの出来ない疑問符号に包まれた。

胸をふさぐような煙硝の臭い、叫び声をあげて擦り脱ける砲弾、悪魔が大口を開いたような砲弾の炸裂、甲板に飛び散る真紅な鮮血と肉塊、白煙を長く残して海中に墜落してゆく飛行機、波浪に呑まれて沈没してゆく艦艇から立昇る真黒な重油の煙、鼓膜に錐を刺し透すような砲声、壁のように眼界を遮る真黄色の煙幕、――戦闘は刻々に狂乱の度を加えて行った。

その頃、米国艦隊の主力は、十六隻の単横陣を作り、最も後方にいたが、漸く三万五千メートルの射程に入ろうとして、専ら注意力を、前方に送っていた。

旗艦セントルイスの司令塔の奥深く、聯合艦隊司令長官ブラック提督は、移りゆく戦況を、主要なる艦艇から送られているテレヴィジョンによって、注目していた。

「戦況を、五分五分に保ち得ているところを考えると、最後の勝利は、わがアメリカに在ることが明瞭じゃ」提督は静かに幕僚を顧みて云った。