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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「提督閣下。わがコロラドは、急速に沈下しつつあります。機雷に懸ったものか、魚雷を受けたものか、附近の兵員からの報告がありませんので、目下取調べ中であります」

「なに、コロラドが、沈没を始めた。何を油断していたのじゃ」

そこへまた、チリリリリとベルが、鳴って、其の隣りのウェスト・バージニアのところに、赤いランプがついた。

「こちらは、ウェスト・バージニアです。唯今潜水艦から、魚雷を喰ったようであります。直ぐに救援隊を御派遣ねがいたい」

「莫迦な奴じゃ」提督は、いよいよ苦虫を噛んだような顔をした。演習ではあるまいし、救援が出来るものか。それにしても潜水艦とは、可笑しいな、敵の潜水艦は、先刻からみているが始めの位置を動いたのは、一隻も居ない筈じゃが……

提督が、不審顔で、頤に手を当てた其の瞬間だった。

めり、めり、めりッ――

司令塔が、馬の背から振り落されでもしたかのように、ひどい傾斜と共に、ガラガラと器物が転落を始めた。

「ど、どうしたッ」提督は、思わず椅子の上から突立って、サッと顔色を変えた。

「日本の潜水艦だッ」

「もう二分と経たない間に沈んでしまうぞ」同室の将校達は、奇声をあげて、非常梯子の滑り金棒に飛びつくと吾勝ちに、第一甲板の方を目懸けて、降りて行った。