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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「今より吾が米国聯合艦隊所属の空軍二千機は、一機をも剰すところなく直ちに艦上を離れ、空中に於て強行戦闘隊形を整え日本艦隊及びそれに属する空軍とを撃破し、以て吾が艦隊の不利なる戦績を救済すべし。尚余力あるに於ては、長駆カシマ灘よりトーキョー湾に進撃し、首都トーキョー及びヨコハマの重要地点を攻撃すべし。ブラック提督」

この一大決心を含めた命令が各隊に伝わると、飛行隊の将卒は、非常なる感激に打たれた。六対十の比率に安心していたのも空しく、今自分達が出て奮戦しないと、この儘懐しい故郷へ帰れないことになるらしいのであった。残された唯一つのチャンスを掴むことについて、不熱心になるものは誰一人として無かった。

「さア、ジャップの奴を、のしてしまえ」

「行こう、行こう。メリーのために」

忽ち米艦隊の真上には、蜜蜂の巣を突いたように、二千台の戦闘、偵察、攻撃、爆撃のあらゆる種類を集めた飛行機が一斉に飛び上った。天日は俄かに暗くなった。

これに対して、精鋭を謳われた皇軍の飛行機は、三百台ばかりが飛んでいたが敵の大空軍に較べて、なんと見窄しく見えたことであったか。流石に沈着剛毅な海軍軍人たちもこの明かな数量の上の不釣合に重苦しい圧力を感ぜずにはいられなかった。