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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「莫迦云いなさんな、胴中と足とが、同じ位の太さだなんて」

「お祖父さんは、見ないから嘘だと思いなさるんですよ。どれ持ってってやりましょう」

お妻は、掌の上に、片っぽの短い靴下を、ブッと膨らませて載せた。それがお妻には、まるでおもちゃの軍艦の形に見えた。

「おい、あのなには……」と長造はお妻を呼び止めた。

「弦三はもう帰っているかい」

「弦三は、アノまだですが、今朝よく云っときましたから、もう直ぐ帰ってくるに違いありませんよ」

「あいつ近頃、ちと帰りが遅すぎるぜ、お妻。もうそろそろ危い年頃だ」

「いえ、会社の仕事が忙しいって、云ってましたよ」

「会社の仕事が? なーに、どうだか判ったもんじゃないよ、この不景気にゴム工場だって同じ『ふ』の字さ。素六なんざ、お前が散々甘やかせていなさるようだが、今の中学生時代からしっかりしつけをして置かねえと、あとで後悔するよ」

「まア、今日はお小言デーなのね、おじいさん。ちと外のことでも言いなすったらどう? 貴郎の五十回目のお誕生日じゃありませんか」

「五十回目じゃないよ、四十九回目だよ」

「五十回目ですよ。おじいさん、五十になるとお年齢忘れですか、ホホホホ」