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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「お話中でありますが」と伝令兵は大きな声で怒鳴った。「唯今第四師団より報告がありました」

司令官の側に、先刻から一言も吐かないで沈黙の行を続けていた有馬参謀長が佩剣をガチャリと音させると、「よオし、読みあげい」と命じたのだった。

「はッ」伝令兵は、左手に握っていた白い紙をツと目の前に上げると、声を張りあげて、電文を読んでいった。「昭和十×年五月十五日午後五時三十分。第四師団司令部発第四〇二号。和歌山県潮岬南方百キロの海上に駐在せる防空監視哨の報告によれば、米軍に属する重爆飛行艇三台、給油機六台、攻撃機十五台、偵察機十二台、戦闘機十二台合計四十八機よりなる大空軍は、該監視哨の位置より更に南南西約五キロメートルの空中を、戦闘機は二千五百メートルの高度、他はいずれも二千メートルの高度をとり、各隊毎に雁行形の編隊を以て、東北東に向け飛行中なり。終り」

「うむ、御苦労」参謀長は、伝令の手から、電文を受取って、云った。

伝令兵は、再び挙手の礼をすると、同じ室の、一方の壁に並んだ、夥しい通信パネルの傍へ帰っていった。そのパネルの前には、通信兵員が七八名も並び、戴頭受話機をかけて、赤いパイロット・ランプの点くジャックを覘ってはプラグを圧しこみ、符号のようなわけのわからない言葉を送話器の中に投げこんでいた。