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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

天幕の中の通信員は、送話器の中に、歯切れのよい声を送りこんだ。

「愛宕山警報所。空襲警報用意よゥし!」

やがて、一分、二分。

電話機のある天幕から、大サイレンの間までには、ズラリと兵員が立並んで、いずれも及び腰で、報告が電話機の上に来れば、直ちに警報が出せるように身構えた。

そして、突如――

「空襲警報ゥ!」

電話機を掴んでいる兵士が、大声で怒鳴った。

「空襲警報!」

「サイレン鳴らせィ!」

命令の声が、消えるか消えない内に、

「ンぶうッ――う、う、う」

と愛宕山の大サイレンが鳴り出した。雄壮というよりも、悲壮な音響だった。

東京市内の電灯という電灯は、パッと消えて、全市は暗黒になった。

「呀ッ」

覚悟をしていた人でさえ、驚きの声をあげた。

「十五秒して、又電灯が点いたら、空襲警報なんだよ」

小学生たちは、学校の先生に教わったとおりに、電灯が消えたので、面白がっていた。

電灯が消えると、俄かに聴力が鋭敏になったのだった。いままで聞こえなかった半鐘の音が、サイレンに交って、遠近いろいろの音色をあげていた。

「ジャーン、ジャンジャンジャン」

「ボーン、ボンボンボン」