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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「呀ッ、敵機だッ」

真白い、蜻蛉の腹のような機影が、ピカリと光った。

そこを覘って、釣瓶撃ちに、高射砲の砲火が、耳を聾するばかりの喚声をあげて、集中された。

照空灯は、いつの間にか、消えていた。

その次の瞬間、弦三の眼の前に、瓦斯タンクほどもあるような太い火柱が、サッと突立ち、爪先から、骨が砕けるような地響が伝って来た。そして人間の耳では、測量することの出来ない程大きい音響がして、真正面から、空気の波が、イヤというほど、弦三の顔を打った。

爆弾が落ちたのだ!

イヤ、敵機が、爆弾を投げつけたのだった。

バラバラッと、礫のようなものが、身辺に降って来た。

照空隊の光芒は、異分子の侵入した帝都の空を嘗めまわした。

その合間、合間に、高射砲の音が、猛獣のように、恐ろしい呻り声をあげた。

それは、人間の反抗感情というのでもあろうか。爆弾の音を聞かされ、照空灯のひらめきを見せられた弦三は、自分の使命のことも何処へか忘れてしまい、

「畜生! 畜生!」と独り言を云いだしたかと思うと、矢庭に側の太い電柱にとびつき、危険に気がつかぬものか、

「わッしょい、わッしょいッ」