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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

兵員は?

もともと一小隊しか居なかった兵員は、四分の一にも足らぬ人数しか、残っていなかった。

「ピリピリ。ピリピリ」

振笛が、けたたましく鳴り響いた。毒瓦斯が、また、やってきたらしい。

何か、喚く声がする。胡椒臭い、刺戟性の瓦斯が、微かに、鼻粘膜を、擽った。

(塩化ピクリンか!)

東山少尉は、腰をひねると、防毒マスクをとりあげた。

「催涙瓦斯だぞオ、催涙瓦斯だぞオ!」

瓦斯警戒哨が、大声に、呶鳴っていた。

東山少尉は、そのとき、何を思ったのか、ツと、二足、三足前方にすすんだ。

「どうも、おかしいぞ」

前方の、放送局の松林あたりに、可也夥しい人数が移動している様子だった。演習慣れした少尉の耳には、その雑然たる靴音が、ハッキリと判った。

どこの部隊だろうか?

司令部が寄越した援兵にしては、無警告だし、地方の師団から救援隊が来るとしても、おかしい。

軍隊ではないのかも知れない。

少尉は、背後に向って、携帯用の懐中電灯を、斜め十字に振った。それは下士官を呼ぶ信号だった。

コトコトと足音がして、軍曹の肩章のある下士官が、少尉の側にピタリと身体を寄せた。

「吉奈軍曹であります」