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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

「ええ、敬礼は太陽にしていたんです。……がその国境で何かあったんですか。例の国境あらそいで、世界一の陸空軍国であるS国と小ぜりあいをしているって聞いてはいましたが、……いよいよ宣戦布告をして戦争でも始めたのですか」

「さあ、何ともいえないが、とにかく穏かならぬ雲行だ。それにこれからは、昔の戦争のように、前以て戦を始めますぞという宣戦布告なんかありゃしないよ。S国の極東軍と来たら数年前の調べによっても、たいへんな数で、わが中国東北部駐屯軍の六倍の兵力を国境に集め、飛行機も一千台、ことに五トンという沢山の爆弾を積みこむ力のある重爆撃機が、数十台もこっちを睨んでいる。そしていざといえば、国境を越えて時速三百キロの速力で日本へやって来て爆弾を撒きちらした上、ゆうゆうと自国へ帰ってゆくことが出来る。実に凄いやつだ。そんな物凄いやつを遠いところから、わざわざ日本の近くにもって来ているし、軍隊をしきりに国境近くに集め、毎日のように中国東北部をおびやかしている。もう宣戦布告ぬきの戦争が始まっているようなものだ。お天気が定まってくると油断がならない。昔、蒙古の大軍が兵船を連ねて日本に攻めてきたときには、はからずも暴風雨に遭って、海底の藻屑になってしまったが、今日ではお天気の調べがついているから、暴風雨などを避けるのは訳のない