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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

怪漢はギョッと驚いたらしく、まるで猫のように素早く、井戸端の向こうにまわって身を隠した。その素早さが、どうもただの男ではない。

「さあ出てこい。怪しからん奴だ」

と、中尉のどなりつける声。怪漢は、しゃがんだままゴソゴソやっていたが、何かキラリと光るものを懐中から取出した。ピストルか短刀か?

「あッ危い……」

旗男は義兄を助けるために、なにか手頃の得物がないかと、湯殿の中を見まわした。そのとき眼にうつったのは、斜に立てかけてある長い旗竿だった。よし、すこし長すぎるけれど、これを使って加藤清正の虎退治とゆこう。

「うおーッ、大身の槍だぞォ……」

いきなり湯殿の戸をガラリとあけると、旗男は長い旗竿を、怪漢の隠れている井戸端のうしろへ突きこんだ。

「うわーッ」

それが図にあたって、怪漢は隠れ場所からピョンと飛びあがった。そしてなおも逃げようとするところを、旗男はエイエイと懸声をして、旗竿の槍を縦横にふりまわした。

「しまった!」

と叫んで、怪漢はその場にたおれた。旗竿が向脛にあたったものらしい。

「ウヌ、この奴……」

と、国彦中尉が飛びこんでいって怪漢の上に折重なろうとしたとき、