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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

警報の用意が命ぜられた。

五百キロの海上だとすれば、あと二時間位で帝都の上空に達するはずだった。海上の防空監視はむつかしい。

この発見がもうすこし遅かったら、どうなったろう。思っても冷汗が流れる。

用意は出来た。

香取司令官は、厳然として「空襲警報」を下命した。

警報の発令と同時に、防空飛行隊にも出動命令がくだった。つづいて高射砲隊などの地上防空隊へも、それぞれ戦闘命令が発せられた。

マイクロホンの前で、中内アナウンサーは、命令遅しと待つほどもなく、香取司令官は手をあげた。

「ラジオ放送で一般に通報せよ。――司令部発表、南及び北関東地区、午前五時二十分、空襲警報発令!」

アナウンサーは、司令官の命令を復誦した。

「よろしい。落ちついて放送せよ」

アナウンサーは大きくうなずいて、マイクロホンに向かって唾をのんだ。さすがに顔の色がちがっている。

伝令があわただしく駈けてゆく。参謀が地図の上に赤鉛筆で数字を書き込む。副官が奥の戸棚から大きな掛図を小脇にかかえてきて、下士官に渡す。下士官は要領よくそれを壁に掛けてゆく。

ジ、ジ、ジーとしきりにベルが鳴る。着剣をした警戒兵がドヤドヤと入ってきて、扉の脇に立つ。