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たてふだ

立札

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,218 字 · 21 页

青空文庫

張一滄はひどく面窶れがして、その肥え太った身体は、骨ぬきのぶよぶよの肉ばかりのようでありました。上唇の髭がしょんぼりと垂れて、頬のへんにぴくぴくした震えが見えていました。

彼は朱文の小房の外に、だいぶ長い間佇んでいたらしく、朱文が外に踏み出すや否や、ひどく慌てて、眼をしばたたき、一足あとに退り、そのままそこに跪かんばかりの様子で、急に両手を差出しました。

「おう朱文、待ってくれ、待ってくれ。何処にも行かないでくれ。」

朱文はいつもの通りの冷静な態度で、恭しくお辞儀をしました。

「あなたにお目にかかりたいと思っておりました。」

「ああそうか、それはよかった。私もお前に逢いたいと思ったが、何しろあの騒ぎで、それに……とんでもない思い違いをしたり……なあ勘弁してくれや。」

朱文は彼の手を執って、そこの横手の腰掛に彼を坐らせ、自分は慇懃にその前に直立しました。

「なあ朱文、もう何にもいわないでくれ。」と張一滄は息をついていいました。「みな私の思い違いだった。お前の考えが正しかった。お蔭で町中が助かったよ。」

「私はただおいいつけ通りにしたつもりでございますが……。