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はしがき

童話集 春

竹久 夢二

竹久夢二『童話集 春』。同一底本的分册已合并为一书。收入:はしがき、春、先生の顔、都の眼、クリスマスの贈物、たどんの与太さん、誰が・何時・何処で・何をした、日輪草、大きな蝙蝠傘、大きな手、玩具の汽缶車、風、最初の悲哀、おさなき灯台守、朝、人形物語、博多人形、街の子、夜、少年・春。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,531 字 · 97 页

青空文庫

のだろう。ちょっと立っている間にさえ、自動車が二十台も留吉の前を走って行きました。

唐草模様のついた鞄一つさげた留吉は、右手に洋傘を持って、停車場を出て、歩きだしました。

「おいおい危い!」腕に青い布をつけた巡査がそう言って、留吉を電車線路から押しだして、路よりもすこし小高くなった敷石の上へ連れていって、「電車に乗るなら、ここで待っていて下さい」と言いました。

そこには立札があって「帯地全く安し」と書いてあるのです。留吉は「呉服屋の広告だな」と思いましたが、帯地の安いことは留吉には用のないことでした。それよりも、今夜留吉はどこへ寝たら好いだろうと考えました。

留吉は、小学校時代の友達で、村長の次男がいま都に住んで好い位置を得てくらしていることを思出しました。

卒業試験の時、算術の問題を彼に教えてやったことがあるから、訪ねてゆけば、彼もあの時の友情を思出すに違いない。留吉は、昔馴染の友達の住所をやっと思出しました。

そこは山の手の高台で、門のある家がずらりと並んでいるのでした。

二十四番地、都は掛値をする所だから、なんでも半分に値切って、十二番地、だなんて、村で物識の老人がいつか話してくれたのを思い出したが、まさかそれは話だと、留吉は考えました。