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どうてい
童貞
夢野 久作
「新青年 第11巻第10号」1930(昭和5)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,572 字 · 27 页
意識が回復したらモチット訊問するかも知れんから……僕は向うの八百屋から本署に電話をかけて来る。女はまだ近くにいると思うから……」
こんな慌てた言葉を夢うつつに聞きながら昂作は眼をシッカリと閉じて二度目の血を吐いた。そうして血だらけの唇の中で……
「水……水……」
とつぶやきつつ横たおしにたおれた。
……それから何分間経ったか……何時間過ぎたかわからなかったが、昂作が気がつくと間もなく、二、三人の男の会話がハッキリと耳に入って来た。
「……この男はその洋妾瑠璃子の情夫だったのですか」
「イヤ。そうじゃないんです。……先刻から見ていたんですがね。……情夫でも何でもないんです。この男はタダの立ちん坊でヒドイ肺病にかかっていたのが、ここまで来てブッ倒れてしまったんです。今、巡査が人夫を呼びに行っているんですがね……この男がツイ今サッキ、向うの四丁目の横町を歩いている時に、そのラシャメン瑠璃子って女がこの乳母車を預けて、電車通りまで押して行ってくれって頼んだんだそうです。それを下宿の二階から見ていた学生さんが、この行き倒れを見に来た序でに、巡査に話したんです。何でもその四丁目あたりで変装したらしいと言ってね」