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たけのさとびと
竹乃里人
伊藤 左千夫
竹乃里人「馬醉木 第六號」根岸短歌会、1903(明治36)年11月13日<br>竹乃里人「馬醉木 第八號」根岸短歌会、1904(明治37)年2月2日<br>竹の里人「馬醉木 第十一號」根岸短歌会、1904(明治37)年5月5日<br>竹乃里人「馬醉木 第十二號」根岸短歌会、1904(明治37)年7月15日<br>竹の里人「馬醉木 第十三號」根岸短歌会、1904(明治37)年8月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,338 字 · 29 页
先生が理性に勝れて居ったことは何人も承知しているところだが、また一方には非度く涙もろくて情的な気の弱いところのあった人である、それは長らく煩って寝ていたせいでもあろうけれど、些細なことにも非常に腹立って、涙をこぼす果ては声を立てて泣くようなことが珍らしくない、その替わりタワイもないことにも悦ぶこともある。
一昨年の秋加藤恒忠氏が、ベルギー公使に赴任する前にちょっと来られた時なども、オイオイと泣かれた加藤氏から貴様にも似合わんじゃないかと叱られたような訳で少し烈しく感情を激すると、モウたまらなくて泣く人であった。内輪の人に対して腹立たり叱ったり泣たりするのも、皆一時の激情に過ぎないので、理屈もなにもなかったのである。
自分が少しのことにも感情を激するくらいであるから、人に対してはそれは随分周密に注意せられていたようであった、どこまでも理は正していられたけれど他の感情を害するようなことはまた決してなし得なかった、そういう訳であるから、理屈の上では非常に厳重で冷酷なことをいうても、その涙もろい情的の方面になるとすぐ以前と反対なことをやる