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わらうおしおんな

笑う唖女

夢野 久作

「文芸」1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,719 字 · 31 页

青空文庫

その他、村役場員、駐在所員、区長、消防頭、青年会長、同幹事といったような、村でも八釜しい老若が一ダースばかり下座に頑張って、所狭しと並んだ田舎料理を盛んにパク付いては、氏神様から借りて来た五合、一升、一升五合入の三組の大盃を廻わしている。皆相当酔っているとはいうものの、まだ、ほんの序の口といってもいい座敷であった。

縁側の障子際に坐っている仲人役の栗野博士夫妻は最前から頻りに気を揉んで、新郎新婦に席を外させようとしていたが、田舎の風俗に慣れない新郎の澄夫が、モジモジしている癖にナカナカ立ちそうになかった。やっと立上りそうな腰構えになると又も、盃を頂戴に来る者がいるので又も尻を落付けなければならなかった。そうして、やっと盃が絶えた機会を見計って本気に立上ろうとしたところへ、今一度前と違った奇怪な叫び声が聞こえたので、又もペタリと腰を卸したのであった。

「アワアワアワ……エベエベ……エベ……」

「何じゃい。アレ唖ヤンの声じゃないかい」

「唖ヤンの非人が何か貰いに来とるんじゃろ」

「ウン。お玄関の方角じゃ」

「ああ、ビックリした。俺はまた生きた猿の皮を剥ぎよるのかと思うた」