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かんざしをさしたへび
簪を挿した蛇
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1946(昭和21)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,681 字 · 20 页
もっとも紅葉の美しさに注意を向けさすことが悪いと言うのではない。それもたいへん結構なことではあるが、それだけで、という意味は、その系統に属する各種の指導だけで、驚異感の方は片がつくと思っては不十分であろう。
近代の専門的な教育法のことは知らないが、私には自分の子供の頃の経験から考えて、思い切った非科学的な教育が、自然に対する驚異の念を深めるのに、案外役に立っのではないかという疑問がある。幼い日の夢は奔放であり荒唐でもあるが、そういう夢も余り早く消し止めることは考えものである。海坊主も河童も知らない子供は可哀想である。そしてそれは単に可哀想というだけではなく、余り早くから海坊主や河童を退治してしまうことは、本統の意味での科学教育を阻害するのではないかとも思われるのである。
いつか紙芝居を利用して児童の教育をやろうとしている会の人が来て、何か案はないかという話があった。目的は紙芝居で科学普及をやりたいというのである。あいかわらず電気の知識とか、飛行機の原理とかを、漫画風に子供にもよく分るように面白くやる案はないかという話で、うんざりした。そういうこともそれ自身は悪いことではないが、もしやるのだったら映画を用いた方がよいので、紙芝居には映画とは別の分野がある。