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かんざしをさしたへび

簪を挿した蛇

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」1946(昭和21)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,681 字 · 20 页

青空文庫

そして理科の時間に、進化論の話と、カント―ラプラスの星雲説とを説明してくれたことがあった。その先生の進化論というのは、少し極端であって、人間からアメーバに遡って、そのアメーバが更に無機物から出来たというのであった。もっともそれは子供心にそういう風に受け取ってしまったのかもしれないが、とにかくそれは当時の私には驚愕に近いものであった。

そしてそれが星雲説になると、更に展開するのであった。遥かなる昔、まだ太陽も月も地球もなかった時代に、星雲が宇宙の片隅に渦を巻いていた。その渦がだんだん凝って固体になるというのであるが、その瓦斯状の星雲の前には、宇宙にはただ力だけが渦を巻いていたという話を聞かしてくれたように憶えている。これも幼い頃の夢であったのかもしれないが、私の頭に残った印象は、そのような形のものであった。

学校から帰ると、よく夕飯前に、奥の暗い六畳の仏壇の間で、老人たちの御まいりの座につかせられた。燈明の光がゆらぐごとに、仏壇の中の仏様の光背が鈍く金色にゆれた。ぼんやりとその光に見入りながら、遠い遠い昔、まだ星雲すらもなかった頃の宇宙創成の日を頭の中に描いてみる癖がいつの間にかついた。