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そまつなはなたば

粗末な花束

宮本 百合子

「新小説」1924(大正13)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,227 字 · 13 页

青空文庫

こちらまで、妙にばつのわるい思いをするように、ばつのわるいすすめようを私はされたくなかった。断れきれず(多分私も)赧くなり、欲しくないグラフィックを買わされるのも快くないに違いない。よけて通りながら、心の底で私は彼女について無頓着にはなれなかった。いつも、何処か翳った心配めいた心持で、根気よく通行人を止めてはその前で傾く婦人帽の運動を見守った。彼女はその時、片言に出来るだけ愛嬌をこめて、

「この本いりません? 二十銭…… どうぞ」

と云っているのだ。

電車に乗りながら私は屡々考えた。

「一体どの位売れるものかな。皆で二十冊位しか持ってもいないようだが――二十冊にしたところで二二ガ四、四円。一月で百二十円! ふうむ」

三月の或る晩、私は従妹や弟と矢張り尾張町の交叉点で電車を降りた。

暫くどっちに行こうと相談した結果、先に、山崎の側を――そちらに夜店が出ていたから――京橋詰まで行き、戻りに新橋まで帰ることになった。

私共は、快活な散歩者らしい様子で気軽に十字路を横切った。そして、鋪道に溢れるような人出に紛れ込もうとした時、私はふと、山崎の陰鬱に光る大飾窓の向い合った処に、一人日本人でない露店商人がいるのに目をつけた。