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そまつなはなたば

粗末な花束

宮本 百合子

「新小説」1924(大正13)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,227 字 · 13 页

青空文庫

万一、香水に心は引かれても、後に立ってこちらを見ている男の風貌を眺めると、思わず手を引こめそうでさえある。

彼のすぐ隣には、けばけばした赤い模様布をどっさり並べ下げた更紗商人がいた。その先には、台を叩き叩き、大声で人を集めているバナナ屋がいた。堆い、黄色な果物が目立った。右側の店舗から漲り出す強い光線、ぶらぶらと露店の上に揺れ、様々な形と色彩の商品を照している電燈の笠。賑やかで、ごたついた東洋的な夜の光景の中で、この外国人の素気ない小店は、異様に印象に遺った。

私には、夕方見かけるロシア婦人とこの男が全然無関係とは思えなかった。彼もロシア人とはっきり感じた。妙に深く、暗く、際限のないような彼の雰囲気が、ロシアのものでなくて何だろう。

私は、あの婦人帽を見ている時持つと同じような或る感じを受けた。漠然とした、言葉にうつし難い生活の辛さ、厭さに同感する心持だ。

半月も経たない夜、私はまた同じ処を通った。香水の商人はいなかった。その代り、感情的な一つの情景を目撃した。

風が吹き、物影がはためくので一層沈んで見える山崎の大飾窓の処に人だかりがある。私は、