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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
「新青年」1935(昭和10)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页
しかし、その冷たい湿っぽい感覚が、私の肺臓にずうんとしみわたりました。逃れるのはいま――私は、鹹っぽい両掌に汗を浮かべて、病を装おうと決心しました。それからが、こうして、手厚いおもてなしをいただく仕儀にございます。どうかいつまでも、下碑になりと、御手元にお置きくださいませ」
永々と続いた、フローラの物語は終わった。
ちょうどそれは、鏡に吹きかけた息のようなものであった。彼女をおびやかした、忌まわしい悪夢の世界は、すべて何もかも、海中に没し去ってしまったのである。
そうしてフローラは、新しい生活を踏み出すことになった。
しかし、ベーリングをはじめ、彼女さえも遠望したという黄金郷の所在は、ついに、この島のどこにあるのか明らかではなかった。それは、フローラという緑毛の処女が、そもそも神秘的な存在であるように、黄金郷という名を、聴いただけでさえ、三人は竜巻の中に巻き込まれたような気がしたらしい。
ところが、その翌日から、フローラをめぐって、この島には激しい情欲の渦が巻き起こることになった。
その翌日――フローラがすがすがしい陽の光に眼覚めたとき、浜辺のほうから、異様な喚声が近づいてくるのを聴いた。