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しみこぼれ

紙魚こぼれ

木暮 理太郎

「日本山岳会会報」1933(昭和8)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,971 字 · 4 页

青空文庫

右躰御当地より乗船致し神奈川宿辺え着船致候儀は、脇往来も同様之儀、是迄迚も海辺附村々え船往来差図(留か)之儀度々触有之候。御当地河岸々の船持共、右之段相心得不罷在候ては心得違之儀可有之、已来右躰之旅人は品川宿入口八ツ山下船着場限り上陸致し、神奈川宿辺迄乗船為致候儀は堅致間敷候。

文化二年、江戸町年寄三人の中の喜多村方で申渡した奉行所からのお触で、『撰要永久録』に載っている。富士や大山に参詣する者共は、江戸から神奈川迄船で行くことはまかり成らぬ。それは本道筋を離れた御法度の脇往来にひとしいものだ、左様心得て居らぬと飛んだ災難に遭わぬとも限らぬぞと暗に嚇している。海道筋の泣言がお取上げになって、一の乗物を奪われた旅人こそいい面の皮である。之も今の登山客誘致に大童となっている鳴物入りの宣伝にうっかりつり込まれ、出かけて見ていやな目に遇うことがあるのと較べて見るのも一興であろう。

(昭和八、一〇『日本山岳会会報』)