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むらさきしきぶ

紫式部

長谷川 時雨

――忙しき目覚めに

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,199 字 · 7 页

青空文庫

一葉女史の性格も、どっちかといえば清原のおもとのようで藤式部のおもとのようではない。

あたくしは影響の下という言葉をつかったが、それは取り下げるとしてみても、その引例の多いことは、ちょっと考えると、「たけくらべ」などは、浅草吉原裏の廓にちかい、大音寺前という、細かい生活や、特殊な町の少年少女たちのことを書いたものだが、その中にすら、みどりという娘の周囲を、若紫のそれに――もっともこの件は、源氏物語と柳亭種彦の「偽紫田舎源氏」とが、ないまぜに出ているが――結びつけ形容している。

そこで、傑作「たけくらべ」は別として、全集中で、あんまり源氏や、その他の古歌によりすぎている作は、一葉の小説としては未熟の方に属すと、忌憚なくいえばいえる。

なぜだろうかと、首をひねったが、一葉女史ほどの人でも、あの大きな「源氏物語」という小説から、小説を書こうと思いたった時、逃れられなかったのだ。

明治新文学の時代が早く、すべてが若かった時なので、時の人の作もよく読み研究したであろうが、紫式部という偉大なる女性作家が、王朝の昔に、あまり大きな影を投げているので、ともすればその着想行文が目の前に現われて来たのだと思う。