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けっこん
結婚
中 勘助
「朝日評論 第一巻第一号」朝日新聞社、1946(昭和21)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,520 字 · 11 页
といったらおかめさんが細い目をなくしてさもおかしそうに笑った。部屋の狭いためか家の人が一人ずつあがってきてひきあわされてはおりていった。羽織袴をつけてるものの聊か野武士めいたところもある私はどこか荒大名の茶の湯のかたちだったが、帰った後の評判を結婚後きくところによれば私は見かけが北欧型で、日本に永くいらっしゃるから和服がよくお似合いになります というところだということに衆議一決したそうだ。そのうえ皆は私に「顔回」という綽名をつけた。書いたものからだろう。顔回は恐れ入るが肱枕でごろ寐をするところだけは似ている。家庭をもってからの心得としては執筆中には茶をもっていってもそうっとおいてくるよう、食事の用意ができても仕事の最中に呼びたてたりしないよう、あまりつましくして恥をかかせないよう、食べ物がむずかしいだろうから心をくばるよう、女の嫉妬はとりわけ見苦しいものだからくれぐれも気をつけるよう、等、等、親らしい愛情と細かい心づかいの籠った聞くだけでも有り難いものだったそうだが、実は私の行きかたはそれとは凡そ反対で、執筆のあいだに茶なぞは飲まないが出されたとて邪魔にはせず、食事の時間はきちんとしていつでも筆をおく、貧乏ぐらしは私のほうが馴れてるらしいし、食事は簡単で料理に手をかけると小言が出る、映画館でも満員電車でも