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けっこん

結婚

中 勘助

「朝日評論 第一巻第一号」朝日新聞社、1946(昭和21)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,520 字 · 11 页

青空文庫

安全地帯の人ごみの中でも歌をよみ詩を作るというように世間の文士型とはよほどちがったものなのだ。お父様はかねがね大の御ひいきの私の姪たちがこの話に骨を折ってくれることをひどく喜んでたという。北欧型顔回は口述試験に及第した。

私はふとしたことから食あたりをしたのが予ての衰弱のためかいつまでもなおらず、警察の許可を得て白米の粥をたべたりしても効果がなく、とうとう床についたまま式日になった。その朝しかたなく起き、床屋へゆく支度をしていざ出ようという時に茶の間でばったりやはりそこへ起きてきた兄と出合った。

「床屋へいくから留守番を頼みます」

私は気軽にそういって家を出、時刻も迫ってるので行きあたりばったりの汚い家で調髪をすませて帰ったら兄が亡くなっていた。私の気もちは混乱した。私は駆けつけた今日の仲人役の間氏に式の延期を希望したが、結局同氏の意見に従い喪を秘してすませてしまうことに決心がついたのが定刻二十五分前。大急ぎで礼服に著かえるあいだに俊子さんが表でタクシーを呼んでくれる。ぼろながら間にあって学士会館へ五分前。留守のことは来賓総代のはずだった梶井さんにお願いしてきたから心配ない。