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ぜったいむじゅんてきじこどういつ

絶対矛盾的自己同一

西田 幾多郎

「思想 第202号」1939(昭和14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,000 字 · 99 页

青空文庫

単に我々を外から否定するとか殺すとかいうのなら、なお真に矛盾的自己同一的に与えられるものではない。それは我々を生かしながら我々を奴隷化するのである、我々の魂を殺すのである。作用が自己矛盾的に対象に含まれるというのは、その根柢において此の如きことでなければならない。環境が自己否定的に自己自身を主体化するということは、自己自身をメフィスト化することである。直観的世界の底には、悪魔が潜んでいるのである。我々の自己が個物的なればなるほど、斯くいうことができる。物が直観的に与えられるということは、単に受働的に見られることであるとか、あるいは作用がなくなることであるとかいうのは、知的自己の立場からの非弁証法的見方に過ぎない。作用が我々に逆に向い来る所に、真の直観というものがあるのである。故に真の直観の世界は、我々が個物的であればあるほど、苦悩の世界であるのである。動物的本能の世界においても、個物が自己の中に世界を映すことによって欲求的であり、見ることから働く。しかしそこでは個物は真に個物的ではない故になお直観というものはない。本能的動物は悪魔に囚われるということはない。