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ぜっけいばんこくはくらんかい
絶景万国博覧会
小栗 虫太郎
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1935(昭和10)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,752 字 · 31 页
所で玉屋では、その「釘抜」を行うのに医者を兼ねた豊妻可遊と云う男を雇っていた。そして、その場所が奥まった中二階の裏に出来ていて、大矢車のうえした――恰度遊女の頭に当る所には、天井と床とに二個所、硝子の窓が切り抜かれていた。その床の一つは、その下が階段の中途になっていて、それは、当今で云うところの曇硝子に過ぎなかったが、天井のものには、鏡が嵌まっていて、そんな所にも、些細な事ながら催情的な仕組みが窺われるのだった。さて、お筆の朋輩の小式部にも、勤め以来何度目かのまかしが訪れて来たのだが、その際彼女が逢った「釘抜」の情景を、この大変長い前置の後に、お筆が語り始めた。
「そんな訳で、小式部さんにも、その日『釘抜』をやる事になったのだがね。その前に、あの人は私を捉まえて、その些中になるとどうも胸がむかついて来て――と云うものだから、私は眼を瞑るよりも――そんな時は却って、上目を強くした方がいいよ――と教えてやったものさ。だけども、その日ばかりには限らなかったけれど、そのような折檻の痛目を前にしていても、あの人は何処となく浮き浮きしていたのだ。と云うのは、その可遊と云う男が、これがまた、井筒屋生き写しと云う男振りでさ。