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ぜっけいばんこくはくらんかい
絶景万国博覧会
小栗 虫太郎
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1935(昭和10)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,752 字 · 31 页
すると、その凹んだ痕の周囲には、まるで赤ぼうふらみたいな細い血の管が、すうっと現れては走り消えて行くのさ。それがお前さん、その消えたり現れたりする所と云うのが、てっきりあの大矢車で――それも、クルクル早く、風見たいな回り方をしているように見えるんだよ」
と次第に、お筆の顔の伸縮が烈しくなって行って、彼女の述懐には、もう一段――いやもっと薄気味悪い底があるのではないかと思われて来た。杉江は、その異様な情景に、強烈な絵画美を感じたが、不図眼の中に利智走った光が現れたかと思うと光子の肩に手をかけ、引き寄せるようにしながら、
「まあ私には、その情態が、まるで錦絵か羽子板の押絵のように思われて来るので御座いますよ。――御隠居様と小式部さんとが二人立ちで……。でも、笄の色が同しですと自然片方の小式部さんが引き立ちませんわ、ああ左様で、あの方のは本鼈甲に、その頭が黒の浮き出しで牡丹を……。それから御隠居様、お言葉の中からひょいんな気付きでは御座いますけど、その矢車と云うのは、いつも通り緩やかに回っていたのでは御座いませんでしたか」と静かに訊ねると、一端お筆は、眩んだように眼を瞬いたが、答えた。