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ぜっけいばんこくはくらんかい
絶景万国博覧会
小栗 虫太郎
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1935(昭和10)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,752 字 · 31 页
然し、そうして、お筆の動作に惹かれて行ったせいか、杉江は、観覧車の細かい部分までも知る事が出来た。
それには細叙の必要はないと思うが、大体が直径二、三町もあろうと思われる、巨大な車輪である。そして、軸から輻射状に発している支柱が、大輪を作っていて、恰度初期の客車のような体裁をした箱が、その円周に幾つとなくぶる下っている。勿論、それが緩やかに回転するにつれて、眼下に雄大な眺望が繰り広げられて行くのだった。が、その客室のうちに、一つだけ美麗な紅色に塗られたのがあって、それが一等車になっていた。
その紅車の一つが、お筆の凝視の的であった事は、後に至って判明したのだったけれども、彼女の奇怪な行動はその日のみに止まらず、翌日もその次の日もいっかな止まろうとはしなかったので、その毒々しいまでの物奇きには、もう既に呆れを通り越してしまって、何か凸凹の鏡面でも眺めているような、不安定なもどかしさを感じて来るのだった。然し、そうしているお筆を見ていると、その身体には日増しに皮膚が乾しかすばって行って、所々水気を持った、黒い腫物様の斑点が盛り上って来た。それでなくとも、鼻翼や目窪や瞳の光りなどにも、何となく、目前の不吉を予知しているような兆が現れているので、最早寸秒さえも吝まなくてはならぬ時期に達しているのではないかと思わ