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ぜっけいばんこくはくらんかい

絶景万国博覧会

小栗 虫太郎

「ぷろふいる」ぷろふいる社、1935(昭和10)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,752 字 · 31 页

青空文庫

と云うのは、或る一つの洒落れた○○な形が、場所もあろうに、皺の波の中に描かれてしまうからであった。こうして、お筆は一年毎に小さくなって行って、今日此頃では、精々七八つの子供程の丈しかないのであるが、然し、そのような妖怪めいた相貌も、寮の人達にとれば、日毎見慣れているだけに、何等他奇のないものだったであろう。

けれども、その時は合の襖を開いた途端に、光子は危く声を立てようとし、後探りに杉江の前垂れの端を、思わずも握り締めた。それは雪洞の灯を掻き立てようとしたのであろう、お筆は雛段の方に少しにじり寄っていて、半ば開いた口が、紅の灯を真正面にうけていたからだった。その――いやに紫ずんでいて、そこには到底、光も艶もうけつけまいと思われるような歯齦だけのものが、銅味に染んだせいかドス黒く溶けて、そこが鉄漿のように見える。そして、その奥が赭っと赤く、血でも含んだように染まっているのだが……、何より光子と云う娘は、幼ない頃からお伽噺と現実との差別がつかなかったり、また日頃芝居や一枚絵などを見馴れている少女だったので、全くそのような娘には、すぐ何かにつけて夢幻的な世界が作られ、彼女自身も、その空気の中に溶け込んでしまう性癖が、なければならなかった。