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ぜつえんたい

絶縁体

豊島 与志雄

「世界」1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,752 字 · 38 页

青空文庫

」

「なるほど、あなたの家はあなたの家、わたしの家はわたしの家、それは賛成ですな。」

そこで初めて意見が一致して、市木さんは自分から、竹垣を拵えようと言い出した。

そうときまると、市木さんはぐずついていなかった。早速、どこからか材料を買い込んできて、自分で竹垣を作った。ところが、前の竹垣と違って、こんどは、低い四つ目垣だった。所々に木の棒を打ち込み、それに丸竹を棕櫚縄で結びつけたもので、それが実に目の荒い四つ目の、高さ二尺ばかりに過ぎなかった。両方の地所に区切りをつけただけで、どちらからも見通せることに変りはなく、私は容易にそれを跨ぎ越せるのだった。それでも、市木さんは満足そうだった。

「これで、出来上った。退屈な時は、ここから跨ぎ越して、遊びにいらっしゃい。」

私の方を見て、眼で笑った。

一仕事すましたという満足感が、市木さんにはあったろう。然しまた、私に対する好意というようなものを、その眼の中に私は感じた。童話を書いたり飜訳物をしたりして貧しい生計を立ててる私の職業を、市木さんはたぶん知らなかったろうが、官吏でもなく会社員でもない私の人柄に、なんとなく好感を懐いたらしいことが、後になって私にも分ったのである。