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ぜつえんたい

絶縁体

豊島 与志雄

「世界」1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,752 字 · 38 页

青空文庫

これなら大丈夫です。」

言い捨てて帰っていった。

私は呆気にとられた。市木さんは私の家の家主でもないのに、板塀やトタン塀などを検分して廻るとは、全く余計なお世話なのだ。もし壊れてるところがあるとすれば、どうしてくれるつもりなのだろう。あの表の塀と同じように、修理してくれるつもりだろうか。

だが、そうでもなさそうだった。というのは、竹垣を取り払ったあとは、そのままになっていたのである。植木屋にでも頼んで新たに作らせるつもりなのが、その職人の都合で延び延びになってるのかと、私は思ったけれど、そうではなかった。幾日待っても、竹垣は作られなかった。

そのため、私の方は困った状態に置かれた。市木さんの家と私の家とは素通しになってしまったのである。市木さんの方では、私の方に面してるのは裏口で、そこの木戸はいつも閉め切ってあり、片方は狭い庭の横手で、檜葉や八手の植込みがあり、私の方から覗いても一向差支えない様子だった。だが私の方は、先方が庭の正面になっており、庭のこちらは縁側で、障子を開け放せば、座敷の中まで先方からまる見えになる。しかも、こちらは平家で先方は二階家なのだ。