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おだのぶなが
織田信長
「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页
然し、綸旨の名による体のよい借用状、徴発令に、現実の大きな実力がないことは分明である。それによって信長は、ともかく天下への自信の発芽を認めることはできたが、まことの自信を持つことはできなかったのだ。
それから、一年すぎた。足利最後の将軍義昭が彼にたよってきた。それと前後して、老蝮の松永弾正が、信書をよせて、信長が兵を率いて上洛するなら、自分も一肌ぬいで助力する、あなたこそ次代を担い、天下に号令すべき大将だと、うまいことを言ってきた。
天下の執政たる悪逆無道の老蝮もたしかにヤキがまわってはいた。主人に、主人の主人に叛かせ、その主人の子供を自分が殺して主家を乗とり、公方を殺し、目の上のコブを一つずつ取って、とうとう天下の執政にとぐろをまいて納ったが、このやり方では味方がない、味方が同時に敵でもある。公方を殺してからのこの数年は、もっぱら味方の三好三党と仲間われの戦争に追いつ追われつ、おかげで奈良の大仏殿に放火して焼いたり、堺へ逃げて、あやまったり、さすがの老蝮も天下の政治をうッちゃらかして、逃げたり、だましたり、夜討をかけたり、つまらぬことに頭から湯気のたつほど忙しい。