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おだのぶなが

織田信長

坂口 安吾

「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页

青空文庫

彼は上洛の信長軍に負けて逃げのびて降参したが、敗北して逃げる何ヶ月も以前から、とっくに信長に降参して、自らその上洛をすすめていたのであった。

降参した老蝮は、さっそく信長を訪問して、京都の治安はこうされたらよろしかろう、などゝ色々献策した、が切支丹の弾圧は必要大切でござるなどと云ってバテレンどもを怒らせた。

こうして、義昭は老蝮を八ツ裂きにできなかったが、ともかく念願の将軍位につくことができた。そのとき、信長依存の交渉に立ち働いた義昭の二人の重臣がいた。一人は正直者の和田惟政であり、一人はインテリ兵法家明智十兵衛光秀であった。そして光秀は義昭の推挙によって信長の家来となった。

こうして、信長という悪魔の天下は、蝮やら曲者やらのうごめきの上に、魔法のラムプの一夜の城の如くに忽然として現れてきたのであったが、そも、信長とは何者であるか、これこそは、当時にあっては、さらに大きな謎であった。

★

信長とは何者であるか。家来にも分らない。彼を育てた忠義一徹の老臣は、餓鬼大将のタワケぶりに絶望して、自殺した。

餓鬼大将はケンカだけは強かった。